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「小説 ヤミよ」
零崎藍織の人間吟遊 長編

零崎藍織の人間吟遊 【医】

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 一度は必要だとは分かっていた。
 でも、嫌だった。
 自分の過去を根掘り葉掘り訊かれることが…。

「闇医者だけれど、変人だけれど、名医だから、大丈夫だよ。藍織ちゃん」
「…分かった、わ」

 双識兄さんがしつこく勧めたのは、
 精神科医による、診察。

 私の愛を刻む行為は、自傷行為だ。
 精神に何らかの疾患を抱えていてもおかしくない。

 双識兄さんに連れられて、家を出る。

「嫌なのよ」
「分かってるよ」
「本当に、嫌なのよ」
「分かってるよ」

 家の前には高級そうな格好良い車が停まっていた。
「…ちゃ」
 軋識兄さんは、優しい笑顔を浮かべて言った。
「藪医者だったら俺が殺してやるっちゃ。心配いらないっちゃよ…藍織、愛してるっちゃ」
 双識兄さんが喰らいつく。
「私だって、藍織ちゃんを愛しているとも!あと、藪医者ではないから!」

 軋識兄さんの車に乗る。
 乗り心地は良かったが、精神状態は最悪だった。

 車は山奥へ向かって山道を進む。
 高級車が、樹に擦れたりしないか、ひやひやした。
 少なくとも、土埃には塗れている。

「見えた…ちゃ?」
「?」
 それは住みやすそうな小さな家だった。

 軋識兄さんが車を停めると、双識兄さんがさっさと歩いて行って、呼び鈴を押す。
 私と軋識兄さんは家に近づいて行く。

「はい」

 出てきたのは…小さな男の子、だった。

「レン、お前、死んでみるっちゃか?」
「いやいや、彼は名医だよ」

 この子が…名医?

「初めまして。私は羊です。中へどうぞ。双識さん、軋識さん、藍織さん」
 名前は兄が教えたのだろう。
 少なくとも羊は…嫌な感じではなかった。

 家のなかは、小ざっぱりと綺麗だった。
 居間に通され、木で作られた円い机と椅子。
「どうぞ座ってください」
 言われて、座る。

 羊が別の部屋でごそごそやっていると思っていたら、お茶を入れていたらしい。
「ハーブティーです。アップルブレンドですから、きっと飲みやすいですよ」

 飲んでみると、甘酸っぱくて、甘い香りで…、
「美味しい」
「良かったです」

「初めて来たから、緊張しているでしょう。嫌なことは話さなくても良いですよ。楽しく、話しましょう」
「そうだねえ、家賊の話でもしようかな?」
「なかなかいい提案だっちゃ」

 突然、気付いた。
 マインドレンデルとシームレスバイアスを前に、羊は全く、恐れていない。

「殺されるって、思わないの?」
 つい、尋ねていた。
 羊は、
「人はいつか死ぬんですよ」
 と、達観したことを言った。
「羊さん、私は死にたくないわ」
「生きたいですか?」
「生きたいわ」

 そこからはただの雑談だった。
「女子学生はスパッツなどと言うものを穿いては、ごふっ」
 双識兄さんをぶん殴ったり、
「あの車って、高そうだったわよね。格好良かった」
「それは良かったっちゃ。車種は忘れたっちゃね」
 軋識兄さんにリスペクトしてみたり…。

 羊は時折、合いの手を入れながら、聞き役に徹していた。

 あっという間に、2時間経った。
 羊は、
「お薬を幾つか出しましょうか」
 と、部屋を出て行った。


「藍織、大丈夫っちゃか」
「ええ。平気」

 羊は、戻ってくると、幾つかの薬を机に出し、
「この薬は、寝る前に飲んでください。よく眠れますからね。この薬は、怖くなったときに飲んでください。少ししたら、落ち着きますよ。分包しますから、もう少し待ってくださいね」

 薬を受け取ると、
「行きたいところはあるかい?」
 と訊かれた。
「俺の車っちゃが…」

 私は場所を指定した。

 羊に帰るときに礼を言った。
「ありがとう」
 羊はにこりと笑うと、
「いつでも来てください。あ、薬が減ってきても来てくださいね」
 と、言った。


「さあ、零崎が始まりますよ――」

 大きな精神病院。そこから出てきた白衣の男を、殺して死者にし、【医】と刻んだ。
「そろそろ行くっちゃか」
「ええ、羊さんみたいな名医じゃなさそうだから、少し、不満だけれど」
 双識兄さんが言う。

「さあ、帰ろう」

 家に帰ると、舞織が駆け寄ってきた。
「お医者さんに注射されましたかあ?舞織ちゃんなら泣いちゃうですう」
「大丈夫よ。採血すらしてないわ」
 心配してくれていたらしい。


「それじゃあ、今日は私が夕食を作ろう!」
「駄目」
「駄目ですう」
「いかんっちゃ」


 その日はハンバーグを作った。
 廉に、愛を囁かれ、歯を磨き、お風呂に入り、

 寝る前の分の薬を飲んだ。
 …不眠の闇は訪れず、翌朝、私は気分爽快で起きた。

 着替えると、家賊のもとへ行き、
「おはよう!」
 みんな、おはよう、と応えてくれた。

 爽やかな朝だ…。私は羊に感謝した。
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