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「小説 ヤミよ」
零崎藍織の人間吟遊 長編

零崎藍織の人間吟遊 【祭】

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 私は泣いてなんかいない。勝手に涙が零れるだけだ。
「私の言葉は…全てを断ち切る…」
 自らの血液で手が滑りそうになる。
 【犠牲宣詩】を持ち直し、左の腕の外側に、いつものように愛を刻み続けた。

「愛して…愛して…愛して…!」

 暗い部屋。今日は家賊が家にいない。
 私はひとりぼっちだ。

「あ…ぅ」

 痛みが、私を世界につなぎとめる。
 死んでしまいそうな孤独と、命を主張する痛み。

 その時、玄関の鍵が回る音がした。
 私はぼうっと考える。

 廉だろうか?凛だろうか?双識兄さんだろうか…?

「誰もいないっちゃか?」
 聞こえた声に、
「…きししきにいさん」
 つい、反応した。

「藍織?部屋にいるっちゃか?」
 ゆっくりと近づいてくる足音。
 ノックもせずに、扉を開けた。

「…ちゃ」
 軋識兄さんに見られたのは初めてだった。
 責められたらどうしようか?
 怖く、なった私に兄さんは、

 ぎゅ。

「愛してるっちゃよ。藍織、手当てをするっちゃ」
 私は泣いてなんかいない。勝手に涙が零れるだけだ。
「軋識兄さん、もういっかい、ぎゅってして」
「甘えっ子だっちゃな。レンには内緒にしてやるっちゃ」

 兄さんは温かい太陽の匂いがした。



「話でもするっちゃか?なんでもいいっちゃ」
 優しい兄の言葉に、同意し、雑談をした。


「人識がね。10円玉を拾ってきたのよ」
「10円っちゃか?舞織に駄菓子でも買う気だったっちゃか?」
「ギザ10なんですって。ふちにギザギザが入ってるだけの10円玉」
「それだけっちゃか」
「それを大事そうに舞織にあげるの」
「良い兄…っちゃか?」
「その10円玉で、舞織は駄菓子を買ったわ」
「まあ、妥当だっちゃ」


 私は何気なく尋ねた。
「兄さんは自分が壊れてしまいそうなほど、欲しいものはある?」
 兄は、軽く答えた。
「あるっちゃ」
「どんなもの?」
「言葉…だっちゃ。役に立ったでも、ねえお願いでも、何でもいいっちゃ」
 …言葉。
「その分、言葉が怖いっちゃ。要らないと言われたら、どうなってしまうのか…終うのか、分からんっちゃ」
 兄さんはきひひと笑い、内緒にするっちゃよ、と言った。

 そして…、

「藍織にも、必要なんだっちゃな…言葉が」
「同情とか、要らないわ」
 すると、軋識兄さんは、凛とした表情で言った。
「要るっちゃ」
 間髪入れずの言葉に戸惑う。
「え…?」
「同じ感情を持てること…同情。必要っちゃよ。…きひひ」
 照れたように笑う。

「同じ…感情…」
 兄は言う。

「藍織にも言葉が必要だっちゃ。廉識はそこのところ、分かってないっちゃね。何度でも、何度でも必要だっちゃ。藍織、愛している。藍織は愛情に包まれているっちゃ。誰よりも愛が必要なのは…お前だっちゃ」
 レンの奴では、あいつだけでは足りないっちゃ。
 軋識兄さんは穏やかに言う。
「お前は家賊に愛されてることを知ってるっちゃ。でも、言葉も欲しいっちゃろう?」

「…欲しい」
 兄さんは私の頭をくしゃくしゃとかき回した。

「いい子だっちゃ」


 メールが届いた。
 凛が幽深にプレゼントを選びたいが、自分のセンスではサプライズにならないようなので、助けて欲しい、と。

「いいわよ…っと、って、あれ兄さん!?」
 兄は勝手に何事か打ち込み、送信した。

「なになになに?」
 送信履歴を確認すると…、

『いいわよ。ここまでが藍織の答えだっちゃ。そしてここからが零崎軋識の言葉だっちゃ。廉識を連れて来ないと酷いことになるっちゃよ』

 ………

「兄さんッ!」
 口笛を吹いて誤魔化す兄。

 そして返信は…、
 連れて行くから弟を虐めないでください、だった。



 非常に微妙な雰囲気だ。
「あの…軋識さん」
「ちょっと来るっちゃ、廉識」
 廉が引きずられていく。
 たぶん、手荒な真似はしない。

「だ、大丈夫かなあ…」
 かなり、不安そうな凛。そういえば、凛も廉も軋識兄さんとはあまり接触を持っていなかった。
 あれで意外に、常識人な軋識兄さんだから、そんなに心配はしていないが、大丈夫だろうか?

「な、なはは…。まあ、なんとかなるさ」
「そうね。幽深ちゃんにサプライズ?」
 もともとの話に持っていくのに、なんて、苦労。
「そうなんだ。俺、サプライズ、好きだから…色々、やったよ」
 成功率は低そうだな。
「一応、聞いておくけれど、成功したサプライズって何?」
「自分を郵送した」

 えーっと…。

「馬鹿をやって、喜ばせようとしたのね?要するに」
「なは」

 ぶん殴ると、ショッピングモールから抜けて、八百屋さんに入った。
「じゃがいもと玉ねぎとにんじんをくださいな」
 疑問符で顔を覆い尽くす凛。
「藍花ちゃん?」
 八百屋さんに【祭】の文字を刻み、
 お肉屋さんで牛肉を買うと、
「残りの材料は家にあるから大丈夫よ」
「はい?」


 軋識兄さんが廉と一緒に歩いて来る。
 心なしか、廉が落ち込んでいたので、兄に噛みつく。
「兄さんッ!虐めたのね!」
「ちゃ」
 誤魔化されないわよ…。
「藍花さん、違うんだ。大事な話を…聞かせてもらったんだ」
「…そう?」
「うん」


 家に帰ると、凛に基礎から叩き込んだ…カレーの作り方を。
「ルウって…なに?」
 どうやら本気で尋ねているので答えてやる。
「カレーを簡単に作れる、魔法のアイテムよ」
「ほお…。藍花ちゃん凄いなあ」
 一瞬、甘えだしそうになったが、我慢。
「どうせ、包丁も握ったことないでしょう?」
「ああ」
「修行よ」


 私の考えたサプライズとは、凛が幽深ちゃんの家に押しかけ、不慣れながらも、美味しくカレーを作り、ふたりで幸せな夕食の時間を送る…というものだった。


 どうにかこうにか、形になったので、私は凛を送り出す。
 廉も食材の袋を手渡し、兄に頑張れと声をかける。
 軋識兄さんは少し、意地悪な表情を浮かべて、
「失敗しても、それはそれで、サプライズだっちゃ」
 エールを送った。


「凄いっちゃな、失敗作の山…。レンのカレーよりはマシだろうから、人識たちも呼ぶっちゃ」
 兄が恐るべき速度でメールを打つ。
 しばらくすると…、
「トキまで来るらしいっちゃ」
「曲識兄さんがッ!」

 喜んでいると、廉が囁いた。
「愛してる」
 小声で…でも、確かに。
 私の欲しいもの。私の欲しい言葉。
「何度だって言うよ。愛してる」
「くす…」
 おかしいわね。嬉しいのに泣くなんて。本当に…。


「駄菓子を買ったあああっ!?舞織ちゃん、あれはギザ10…」
「やっぱり駄菓子じゃ、お腹は膨れません。微妙なカレー様様ですう」
「これで失敗作なのかい。私のカレーはどうだろう?」
「悪い」
「最悪だっちゃ。凛識のカレーと比べたりしたら、藍織の苦労はいったい、何なんだっちゃ?」
「凛のカレーだと思うと美味しい」
「あら、ブラコンね。人のこと、言えないけど」

「愛してるよ」
「私も」
 囁く、愛の言葉。

 軋識兄さんが微笑んだ。
 急に顔が熱くなった。
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